098 「円相」

 

福迫 大智 Daichi Fukusako

素   材:白御影石
実物寸法:170×170×180cm

今回彫刻の素材として扱う白御影石は何万年、何十万年も前に生成された自然のもので、無機質で堅く冷たい素材です。しかし太古から現在に至るまで長く付き合い続けられた近しい素材です。耐久性の面でも強く、これから何十年、何百年と姿形かわりなく存在するためにはとても適した素材でもあります。
 そんな素材を肌で感じてもらいたいという想いから私たち人間よりも大きいサイズで実現させたいと考えました。アートというと仰々しく、近寄りがたいと思われることも多いでしょうが、この作品は触れたり、座れることを構想しています。
 形は巨大な円形が天に持ち上げられた姿をしています。仏教において円は様々な事象を象徴化し、形として表現したものだそうで、それほど円という単純な形体がただならぬ力を秘めているように思います。
 石の円は燦々と照る日光を通し、雪や雨風も遮ることがありません。
そこから光が降り注ぐ様は木もれ日のような清々しさ、温かみが感じられます。また石が白いので空間は明るくなり、季節や時間帯による光の違いで陰影の差、反射などで作品の見え方が変わり、自然をより強く意識させてくれます。
 この彫刻によって空間を独占する、奪い取るというのではなく、あくまで今ある景観がより映えるようなスペースとして、そしてこれから静かに国立に存在し続けるアートになれば幸いです。