最終審査を終えて

/ 4月 9, 2018/ お知らせ

 3月29日に最終審査が行われ、審査員の先生方から講評をいただきました。設置された実作品はどれも完成度が高く、鑑賞を楽しみながら選考されていた様子がうかがえました。授賞式の際には、大賞に輝いた近持イオリさんからもコメントをいただきました。第2回野外彫刻展は、共催の国立市・国立市教育委員会の皆様、協賛企業の皆様、設置工事にご協力いただきました企業の皆様、その他多くの方々のおかげで無事開催することが出来ました。深く感謝致します。また、授賞式にご協力いただきました国立音楽大学中学校高等学校の生徒さん、参列いただきました関係者の皆様・一般市民の皆様、本当にありがとうございました。

©小櫻ようこ


 

 

【審査講評】

 
■選考委員長 建畠晢氏

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 道のグリーンベルトが狭いのでここにうまく野外彫刻がおさまるのかな、というところが気になっていましたが、実際行ってみると、設置された10作品はそれぞれ、素材の表情が違うチャーミングな感じで、壮大な彫刻と違って街にしっくりおさまっていました。現場を見て判断した作家の力だと思うのですが、うまくいったな、という良い配置でした。彫刻公害という言葉があって、あまり彫刻が立していると辟易してしまうのですが、散歩していてちょうどいい間隔、バランスだと思いました。
 近持さんのグランプリは、2色の石をストライプ状にリズミカルに組み合わせたいい作品で、無機的な素材なのにほんわかとした生命感みたいなものがあって、最初通りかかったときに今回はこれがグランプリかなと思いました。
 準グランプリの武荒さんの作品は、タイトルに「神像(道ゆく人に幸福を・・・)」とありますが、幾何学的な形だけれど何か生物的な面白いユーモラスな雰囲気もあって、むこう(大賞作品)は石の色そのまま、これは金属の上に赤いコーティングをしているのが全く逆で鮮やかな色彩の面白さがありました。
 優秀賞「花と空と太陽と」の小笠原さんは、コールテン鋼という、錆を表情として質感としてうまく生かしていて、内側も非常に細かくきちっと作ってあって技術的にも完成度が高いと思いました。「たけくらべ」は大理石ですが、石ってこんな風な使い方もできるのかと。流動的というか軟体的というか、面白い石の質感を引き出していてユニークでした。加藤さんの「象」は、全く逆に物凄くメカニカルな完成度の高いもので、まさしく公共彫刻のひとつの典型を示しているレベルの高い作品だと思いました。
 


 
■選考委員 酒井忠康氏

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さくらの季節に、作品も大変喜んだ感じで設置されておりました。
歩道と自転車道との間に設置された作品を10点見て歩いてその中から審査、選考していくつか賞にあげましたけれど、それぞれみなさん努力の甲斐があって選別するのに大変に苦労いたしました。甲乙付けがたかったと思いますが、今回の受賞者5点を選びました。賞に恵まれなかった作品もそれぞれが個性的で落とすのに忍び難かったという思いがあります。
大賞の作品は晴れ晴れしい感じがあるのと、石を上手に使っていたので大変良かったと思いますし、仕事の丁寧さ加減に惹かれるものがありました。
準大賞は、赤い鮮やかさが目立ちました。良く見ると球体の鏡面加工の道路側から見た見え方と歩道側から見た見え方の、遠近の違いが非常にデリケートに工作されていて、彫刻という表現媒体を生かしたいい作品だったと思います。
 


 
■選考委員 池田良二氏

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 くにたちアートビエンナーレ2018は芸術環境創造事業の一環としての、第2回野外彫刻展ですが、第1回との大学通り緑地帯に設置したのと異なり、作品の大きさの制限、難しいところを、作家の方々がよく自分の個性を発揮しながら、小さな「彫刻」の詩と、触れることの出来る作品を制作いただいたことに深く感謝致します。
 設置された10点の作品から、ある彫刻家の言葉を想い出しました。「彫刻とは事物の本質であり、自然の本質であり、永遠に人間的なものである」と。
 大賞の近持さんの「EARTH VIBRATION天使の梯子」は制作意図にも書いてありますが、人間と宇宙の「あいだ」太古から出てきたエネルギーを感じられ、道行く人々にもやわらかさとしみじみさと硬さを感じさせる作品です。
 開花した桜の下ですべての彫刻が美しく、人は誰でも芸術に親しみ、ここ国立の彫刻のある風景は、これからもこのまちの大切な風景になると思いました。
 


 
近持イオリさん大賞コメント(授賞式より)

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街自体がキャンパスのような、素晴らしいこの街の空間に彫刻を置けたことを大変光栄に思います。